てんかんの発作を防ぐためによく使われている薬が、多発性硬化症を患う人の視力を守る可能性があると分かった。
英国立神経学神経外科病院のラジ・カプール氏らの研究グループが、2015年4月18日から25日に開かれた米国神経学会の第67回年次総会において報告している。
神経の炎症が問題に
神経の病気である多発性硬化症は、脳、脊髄、視神経に繰り返し炎症が起きる病気だ。起こってくる問題には、視力障害、運動まひなどの症状がある。こうした症状の再発と回復を繰り返す。白人に多い病気だが、日本でも約1万人がこの病気に悩まされている。日本では難病に指定されている。原因はまだよく分かっていない。体を守る仕組みである免疫系の異常が病気に強く関わっていると知られる。女性の方が男性の3倍多く、この病気にかかっている。
多発性硬化症を患う人のおよそ半数は、「急性視神経炎」という目の病気を経験する。これは視覚を目から脳まで伝える神経に炎症が起こるもので、部分的または全体的に突然失明したり、かすんだり、痛みが出ることがある。視力は徐々に回復するものの、神経と目に損傷を与える。
研究グループは、2週間以内にてんかんの症状があった86人を対象として、てんかん薬フェニトインまたはニセ薬(プラセボ)を3カ月飲んでもらい検証を行った。
医療用画像を用いて、研究開始時と6カ月後に網膜の厚さを測った。
網膜の厚さにも効果
その結果、フェニトインを飲んだ人はニセ薬を飲んだ人と比べて、神経線維層のダメージが30%少なかった。網膜の厚さは、フェニトインを飲んだ人の方が34%厚かった。一度の発作後、視力は回復し、長期的な視力の経過には2つのグループ間で明らかな差は認められなかった。
「今回の結果がより大規模な研究でも証明されれば、多発性硬化症の神経損傷や失明を防ぐ治療法につながる可能性がある」と研究者は語っている。
てんかんの薬に思わぬ効果があるようだ。
文献情報
Kapoor R et al. Epilepsy Drug May Preserve Eyesight for People with MS. Neurology. 2015 Apr 18.
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