病気の細胞を殺すために、免疫系の細胞を強化する「免疫療法」。最も一般的なタイプの白血病をもつ14人中8人の患者に対して、治療の効果があったという研究結果が発表された。
TEXT BY ANNA LISA BONFRANCESCHI
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI
WIRED NEWS (IT)
「慢性リンパ性白血病(Chronic Lymphocytic Leukemia: CLL)」は、とくに西欧においてその症例がよくみられる白血病のひとつだ。B細胞の異常な増殖が特徴で、末期患者にとってその治療は非常に苦しいものだし、またしばしば再発にも苦しめられる。
『Science Translational Medicine』で発表された研究は、患者にとって新たな希望となりうるものだ。なぜなら、この病気との闘いにおける免疫療法について、部分的な有効性を示すものだからだ。
免疫系の細胞の活動を強化して病気に打ち勝とうとする免疫療法は、腫瘍を治療には比較的新しい手法で、概して実験段階にある。病気の細胞を攻撃するのではなく、人体の防衛を強化して、間接的に腫瘍と闘う。これは腫瘍に対する戦いにおける概念的な変化だといえる。
今回発表された新たな研究では、T細胞の軍隊を武装させて、腫瘍細胞に対してより攻撃的にさせるという手法を用いている。患者自身のT細胞を(遺伝的に)改変して、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor)として知られる抗腫瘍受容体を発現させ、攻撃すべき細胞(この場合はB細胞のCD19)に存在するいくつかのタンパク質(抗原)を認識させる。
実験室で増殖させた後で、これらの細胞は患者たちに再び注入される。彼らの中で、受容体の導きによる識別と、T細胞に固有の細胞毒性の働きにより、より強力に病気の細胞と戦うことができるようになる。これは個人向けにカスタマイズされた細胞治療の新たな実証例にもなる。
ペンシルヴァニア州立大学ペレルマン医学大学院のデイヴィッド・ポーターは、9月2日、14人の患者の追跡調査の結果について語っている。彼らは末期のCLLにかかっていて、薬物療法が行われたにもかかわらず再発して病気が進行したことで、この実験的な細胞治療を受けたという。患者たちの多くは、骨髄からの幹細胞の移植にも選ばれることはできなかったと研究者たちは付け加えている。
14人の患者たちのうち8人にとって、免疫療法による治療は効果的で、4例において、再発なしの完全な小康状態を得ることに成功した(ほかの患者では部分的だった)。完全な小康状態となった患者たちのうち2人は、処置を受けてから4年でガンから解放された。おそらくは、改変されたT細胞のおかげだろう。
血液の分析によって示されたように、T細胞は患者たちの中で長い間残存し、増殖した。ペンシルヴァニア州立大学ペレルマン医学大学院の所属で研究の著者のひとり、カール・H・ジューンによると、少なくとも改変された細胞(CTL019)のいくつかは、長期間にわたって腫瘍細胞を追跡する能力を維持していたのだという。
細胞の注入を受けた患者たちは、副作用として著しい炎症反応を起こした。しかし、ほかに重要な合併症はなかった、と研究者たちは説明している。
免疫療法の可能性の検討はいまも続いていて、これからも続くだろう。量と反応の関係をよりよく解明することも試みられている。将来の手法は、免疫療法を薬物療法と組み合わせる可能性を検討することができるだろう、と著者たちは結んでいる。
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