東京大学大学院理学系研究科の野崎久義准教授らの研究グループは、最も原始的とされている灰色植物の微細な細胞内の3次元構造を明らかにし、10~20億年前にシアノバクテリアが共生して誕生した最初の光合成植物細胞の微細構造を初めて立体的に推測しました。今後、他の真核生物の微細構造を明らかにすることで、光合成植物の起源の理解が深まると期待されます。
太陽からふりそそぐ光が植物細胞の葉緑体に吸収され、地球上の生命のエネルギーの源となっています。この葉緑体の起源は今から10~20億年前にシアノバクテリアが真核細胞に共生したことで、最初の植物の細胞が生まれたと考えられています。しかし、最初の植物の細胞が具体的にどのようなものであったかは謎に包まれています。
研究グループは、最も原始的な光合成植物と考えられている灰色植物で厚い細胞壁をもつグラウコキスティス(学名Glaucocystis)属の原形質体表層の微細な3次元構造を明らかにしました。グラウコキスティスの微細な3次元構造は細胞膜全体を小葉状の扁平小胞が密に裏打ちするというものです。このような微細3D構造は原始祖先細胞が葉緑体を獲得し、最初の植物になったときに持っていたことが推測されました。
本成果には、植物細胞のように厚い細胞壁をも透過して、その中身を観察することのできる超高圧電子顕微鏡が欠かせません。本研究では、大阪大学超高圧電子顕微鏡センターが保有する世界に一つしかない、世界最高加速電圧の超高圧電子顕微鏡により実現したものです。
「今回明らかになった真核生物の始原的細胞を支える細胞の3次元構造は、細胞が葉緑体と細胞壁を獲得する以前から、植物の祖先細胞が持っていた細胞を守る構造であると考えています」と野崎准教授は話します。「今後、この仮説を検証すべく、他の真核生物の微細な内部構造も明らかにしていく予定です」と続けます。
論文情報
Ultra-high voltage electron microscopy of primitive algae illuminates 3D ultrastructures of the first photosynthetic eukaryote", Scientific Reports Online Edition: 2015/10/06 (Japan time), doi:10.1038/srep14735.
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