https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00001/00500/
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東芝傘下の東芝デバイス&ストレージは、海外で旺盛な需要がある直流送電などの電力インフラ向け製品を中心にパワー半導体事業を強化する。2025年からシリコン(Si)の新製品を順次展開する。数量を見込める車載向け炭化ケイ素(SiC)製品では、ロームとの協業を通じて供給体制を整備する。
2024年12月開催の半導体製造装置・材料の展示会「SEMICON Japan(セミコンジャパン)2024」に併設されたセミナーで半導体事業部パワーデバイス技師長の高下正勝氏が登壇し、同社のパワー半導体戦略を語った。同社はパワー半導体業界において、PCなどの民生機器や自動車に向けた低耐圧のSi MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)に強みを持つことが知られている(表1)。実は高圧直流送電(HVDC)のような電力インフラなどに向けた大電力製品も得意にする。
表1 パワー半導体における東芝デバイス&ストレージと競合他社の比較
(出所:日経クロステック)
インフィニオンテクノロジーズ |
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オンセミ |
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STマイクロエレクトロニクス |
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三菱電機 |
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ローム |
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東芝デバイス&ストレージ |
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特に圧接型と呼ばれるパッケージにIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を収めたモジュール品に強みを持つ(図1)。セラミックパッケージを採用しているので、故障時の冗長性に優れており、かつ防爆性もある。そのため、高信頼を求める用途で採用が進む。同社のIGBTは独自の構造を備えていることから同社は「IEGT」と呼び、そのIEGTを圧接型パッケージに収めた製品を「PPI」と呼ぶ。
今後、HVDCの需要を見込んで出力の高い新製品を投入する。2025年に耐圧6.5kVで2000Aの製品、2027年に同4.5kVで5000Aの製品を量産する方針である。
大電力用途では、SiC製品も手掛けている。同用途の次世代品を開発中で、2029年に製品化する予定だ。
車載SiCをローム工場で量産
車載向けにも力を注ぐ。電気自動車(EV)の市場は足元では失速しているが、中長期で見れば成長する市場とみており、製品ラインアップを強化する。2025年にSiC MOSFETの次世代製品を量産する方針である。SiCパワー素子の前工程の製造では、ロームの協力を仰ぐ。ロームの宮崎第二工場で製造する予定だ。同工場では、口径200mm(8インチ)ラインを用いる。
東芝デバイス&ストレージは口径150mm(6インチ)のSiCラインを持つが、数量を見込める車載用途では8インチラインがよいと判断。ただし、自前でSiCの8インチラインを用意するには投資がかさむ。そこでロームに製造を委託する方針である。
Siパワー素子も強化する。ダイオードを一体化したRC-IGBT(逆導通型IGBT)を2026年に製品化する。耐圧1200Vである。
RC-IGBTはIGBTにダイオードを集積して1チップ化したもの。インバーターやコンバーターといった電力変換回路では、IGBTのようなトランジスタとダイオードをセットで用いる。これらを1チップ化することで、それぞれを別に用意する場合に比べて、パワー素子のサイズを約3割小さくできる。それにより、コストも減らせる。
こうした利点があることから、ハイブリッド車を中心に採用が広がっている。デンソーや富士電機が先行しており、東芝デバイス&ストレージは後発になるが、これまでの実績や信頼性の高さをウリに勝負する。東芝によれば、車載向けにこれまで約20年間で累計3億個のIGBTチップを出荷したという。
GaNに再挑戦
産業向けでは、従来のSiやSiCのパワー半導体に加えて、窒化ガリウム(GaN)もラインアップに加える。東芝グループはかつてGaNパワー素子を製造し、グループ企業のLED照明に採用したものの、その後は停滞した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」に採択されたことなどを契機に、東芝デバイス&ストレージがGaNパワー素子の事業拡大に再び挑んでいる。
耐圧650V品をサンプル出荷中で、2025年の量産を狙う。ゲートに電圧を印加しなくても導通する「ノーマリーオン」である。そこで、Siの低耐圧MOSFETと組み合わせる「カスコード接続」で、ゲートに電圧を印加しないときには導通しない「ノーマリーオフ」動作にする。パワーエレクトロニクス機器では安全性などの観点から、ノーマリーオフ動作が求めれるからだ。2027年には、耐圧650Vで、単体でのノーマリーオフ動作が可能なGaNパワー素子を製品化する計画である。
48V系向け製品を拡充
東芝デバイス&ストレージが強みを持つ低耐圧のSi MOSFETでは、48V系に向けた製品に力を注ぐ。以前はPCなどの民生機器で採用されていたが、現在ではデータセンターやテレコム、車載での用途が広がっている。こうした用途では現在、12V系から48V系への移行が進んでいる。そこで、48V系に対応する耐圧80V品や100V品で新製品を投入する。
東芝デバイス&ストレージは低耐圧MOSFETや車載IGBT、並びにPPIなどを得意としてきたことから、これまでSiパワー素子の製造能力の拡大に力を注いできた。その拠点が、製造子会社である加賀東芝エレクトロニクスが有する石川県の工場だ。同社は日本のパワー半導体企業の中ではいちはやく、口径300mm(12インチ)ラインで製造を開始した。その第1ラインで2022年度下期に量産を始めた。
第2ラインに関しては、2段階を経て稼働させる計画である。まず第1期として、2024年度中に量産を始める。これにより、パワー素子の生産能力は2021年度比で約2.5倍になるという。第2ラインの第2期については、量産開始時期を明らかにしていないものの、稼働後の生産能力は2021年度比で3.5倍になるとする。
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