- 排気ガスの熱を電気に回生することで、CO2排出量を削減できます。
- エンジン始動時に排熱を利用して暖機することで、車両の燃費を向上させることができます。
- 排熱発電ユニットを搭載することで、オルタネーターの負荷を軽減することができます。
- 排熱発電と排熱利用を同時に行うことで、大幅な省エネルギー化が図れます。
- 万が一の点電の時でも長時間にわたり電力を供給することができます。
2025年 | 東北大学 プレスリリース・研究成果
安価で低毒性のMg₂Snが 熱電発電デバイス用として実用レベルに到達 ─ 自動車排熱・産業排熱を回収する発電に期待 ─
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 応用物理学専攻
准教授 林 慶
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- マグネシウム(Mg)・錫(Sn)化合物(Mg2Sn)単結晶(注1)の空孔欠陥(注2)の領域制御に成功しました。
- 空孔欠陥の領域制御により転位(注2)が増大することを解明し、高電気伝導かつ低熱伝導の特性を併せ持つ熱電材料として有望です。
- n型とp型の両方でMg2Sn単結晶を用いた高性能な熱電発電デバイスの実現が期待されます。
【概要】
排熱から発電できる熱電材料は、低炭素社会を実現するための有望な材料として注目されています。これまでに様々な材料が開発されていますが、その中でも埋蔵量が多く毒性の低い元素からなるマグネシウム・錫化合物(Mg2Sn)は、自動車排熱や産業排熱を利用する熱電発電デバイスを視野に注目されています。
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻の黄志成助教と林慶准教授は、中国・清華大学の李敬鋒教授の研究グループと共同研究を行い、これまでの研究で単結晶作製に成功し、特性について研究を重ねてきたMg2Snについて、単結晶が電気をよく流し熱は流しにくいという2つの効果を空孔欠陥領域の制御により両立し、n型とp型の両方で熱電性能を高くすることに成功しました。これにより、実用レベルのMg2Sn単結晶を用いたエネルギーハーベスティング(注3)の実現が期待されます。
本研究成果は、米国の科学誌Small Methodsに2025年3月27日に速報として掲載されました。

(左)当研究で作製したマグネシウム錫化合物単結晶の高倍率透過型電子顕微鏡像と(右)それから得られた格子面の画像
【用語解説】
注1. マグネシウム(Mg)・錫(Sn)化合物(Mg₂Sn)単結晶
MgとSnがモル比2:1で化合した物質の単結晶を指す。
注2. 空孔欠陥、転位、格子欠陥
作製試料に含まれる点欠陥や線欠陥の一種。これらの総称が格子欠陥である。点欠陥として、原子が欠損する空孔欠陥がある。線欠陥として、特定の原子面の上方と下方で原子面の数が異なって余剰原子面が生じる転位(刃状転位)がある。
注3. エネルギーハーベスティング
排熱などの身の周りの未利用エネルギーから電力を得る発電技術。
【論文情報】
タイトル:Dislocation Introduction via Domain Engineering in Mg2Sn Single Crystal to Improve its Thermoelectric Properties
(和訳:Mg2Sn単結晶の熱電特性の向上のためのドメイン制御による転位の導入)
著者:Zhicheng Huang, Kei Hayashi*, Wataru Saito, Hezhang Li, Jun Pei, Jinfeng Dong, Toshiaki Chiba, Xue Nan, Bo-Ping Zhang, Jing-Feng Li and Yuzuru Miyazaki
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 准教授 林 慶
掲載誌:Small Methods
DOI:10.1002/smtd.202500385
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻
准教授 林 慶(ハヤシ ケイ)
TEL: 022-795-4637
Email: kei.hayashi.b5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻
教授 宮﨑 讓(ミヤザキ ユズル)
電話 022-795-7970
Email: yuzuru.miyazaki.b7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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