HIVに感染しているコロンビア人男性に、条虫から伝播したがん細胞に起因するがん性腫瘍が発生した症例が報告され、「New England Journal of Medicine」11月5日号に掲載された。米国疾病管理予防センター(CDC)によると、これはいわゆる「悪性形質転換」の初めての症例だという。
小型条虫(Hymenolepis nana)は、開発途上国をはじめ世界的によくみられるヒトの寄生虫。ネズミの糞や昆虫に汚染された食物や、感染者の糞便から条虫の卵に感染することがある。通常は無症状だが、腸内で小型条虫が繁殖を繰り返す場合もある。今回の症例では、HIVにより免疫力が低下していたために小型条虫の繁殖が抑えられず、一部の条虫の細胞に蓄積された変異が最終的に宿主の腫瘍を引き起こしたと考えられる。
2013年、コロンビアの医師からCDCに奇妙な症例についての相談があった。41歳のHIV感染者の男性が疲労感、体重低下、発熱、咳を訴え、CT検査では肺、肝臓、副腎に腫瘍が見つかったが、生検の結果、腫瘍はがんに似ているものの細胞サイズは10分の1以下と極めて小さく、ヒトの細胞には通常みられない細胞の融合もみられた。CDCのチームは約3カ月かけて患者の腫瘍細胞内に小型条虫のDNAを発見したが、男性はその3日後に腎不全のため死亡した。
CDCの研究チームの1人であるAtis Muehlenbachs氏によると、条虫の細胞が悪性化して宿主の腫瘍を引き起こした機序はわからないが、今回の症例では患者がHIVの薬を服用しておらず、免疫力が著しく低下した状態だったという。しかし、HIVも小型条虫感染も開発途上国ではよくみられるため、類似する症例が起こった場合、ヒトのがんと誤診されるおそれがあると研究チームは懸念を示している。腫瘍細胞があり得ないほど小さい場合は危険信号だとMuehlenbachs氏は話している。
条虫由来の腫瘍の治療法は未知だが、従来のがん治療が有効と考えられる。米国がん協会(ACS)のLen Lichtenfeld氏は、「寄生虫を含めた一部の慢性感染症ががんリスクを上昇させることは以前から知られている。今回の症例の解明に用いられた最新の手法によって、さまざまな感染症とがんの関係についての理解が進む可能性もある」と指摘している。
Muehlenbachs氏は、この症例は条虫感染予防の重要性を強調するものだと述べ、寄生虫の蔓延する国に渡航する際には手洗いや水、食べ物に注意するよう助言している。(HealthDay News 2015年11月4日)
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