来年春、スイスのヴァレー州シオンにおいて、世界で初めて自動運転車が公共交通機関で使用される。フランス企業「NAVYA」が開発した「ARMA」と呼ばれる2台の自動走行バスが、約3万3,000人の住むシオンという街の限られたエリアで運行される予定だ。その最大乗車人数は15人で、手動操作も遠隔操作も不可能という、自動走行車の最高レベル「カテゴリー5」に分類される。しかし、何か問題が起こった際は、遠隔ステーションのモニターからARMAのナビゲーションに新しい指示が送られ、バスは自動でそのまま走行し続けることができるという。
このバスの走行用ソフトウェアを提供しているのは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の卒業生2名によって設立されたスイスのスタートアップ企業「BesttMile」。同社は、今後も大学と運行管理を制御するシステムであるフリート管理や自動走行におけるアルゴリズムの研究開発における業務提携を続けていくという。また、郊外でバスの運行を営むスイスの大手バス会社「PostBus」と契約を結ぶことにより、今後は同社が小規模のNAVYAのバス・システムも管理する予定だ。 大規模な交通網を持つPostBusのバス・システムとは異なり、ARMAはシオン市街の観光地エリアのみを、45km/h以下の速度で運行する。その外観は「ミシュラン・チャレンジ・ビバンダム」に2回出展されたリジエの「VIPA」にもどこか似ているようにも見える。
ARMAは完全な電気自動車で、ワイヤレス充電が可能。使用状況にもよるが最長24時間走行できるという。また、現在利用可能なあらゆる種類のセンサーが搭載されており、ステレオ・カメラやLIDAR(レーザーによって物体の位置、距離、形状を特定するシステム)、赤外線センサー、GPSなどによって、位置の誤差は2cm以内という正確さだ。また、実際にルートを走行することによって、より多くの情報が追加されていくようにプログラムされている。 さらに2台のバス同士で交信したり、スピーカーを通して乗客に話しかけることもできるそうだ。乗客がバスに返答する際はキャビンのタッチスクリーンを介して行う。必要があれば、車外に向けて設置されたディスプレイを使って、バスの外にいる人々とコミュニケーションをとることも可能だ。
NAVYAは、テスト段階が成功したら他の地域にもARMAを投入したいと考えているが、そのためには法規制を整える必要があるだろう。例えば、NAVYAの本国であるフランスでは、完全な自動走行車を公共交通機関で使用することは法律で認められていない。
By Jonathon Ramsey 翻訳:日本映像翻訳アカデミー
(2015年11月29日Autoblog日本版「世界初、自動運転バスがスイスの街で公共交通機関として運用開始に」より転載)
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