拡大するiPS細胞から腎臓組織をつくる過程
ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作り出した腎臓の一部の組織をマウスの腎臓に移植し、血管とつなげて成長させることに、熊本大学のグループが成功した。腎臓病の原因解明や再生医療への応用が期待される。20日、米科学誌「アメリカ腎臓学会雑誌」(電子版)に発表した。
熊大発生医学研究所の西中村隆一教授(腎臓発生学)らの研究グループは2年前、iPS細胞を使い、血液から尿を濾過(ろか)する「糸球体(しきゅうたい)」や、水や栄養分を体に再吸収する「尿細管」などの組織を作り出すことに成功したが、組織は濾過膜がまばらで少ないなど未熟だった。
同グループによると、今回、iPS細胞で作る腎臓組織の元になる細胞をマウスの腎臓に移植し、成長させることに成功した。腎臓と腎臓を覆う薄い膜の間への移植のため、圧力で細胞がつぶれてしまうことが課題だった。そこで膜との間に寒天で作った棒を入れて空間を確保。この工夫で比較的大きな細胞の移植が可能になったという。
ログイン前の続き作り出された糸球体にマウスの血管がつながり、濾過膜が一定の幅で並ぶなど、見た目の構造も実際の糸球体に近づいた。糸球体の中には、濾過されたと思われる物質も確認されたという。
糸球体は多くの腎臓病に関係しており、西中村教授は「人間の太い血管との接続、尿が流れていく排出路を作ることが課題。機能する腎臓に近づけたい」と話した。(石川春菜)
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