カナダのトロント大学が、研究用の細胞組織をロール状に培養する技術を開発しました。患者から採取した細胞組織を軸に巻き取って培養し、実験に使うときはトイレットペーパーのように引き出して使えます。 腫瘍、特にがんは遺伝子のエラーが組み合わさった結果、患者それぞれにユニークな特徴を持っているとされます。しかしそれに対する治療は放射線の照射や抗がん剤など、正常な細胞組織にも影響を与える焦土作戦的な方法が一般的に用いられます。
トロント大学の研究者らは、患者ごとの特徴に合わせた効果の高い治療を選択可能とする方法を考えました。それは患者の腫瘍細胞組織をスポンジシート状に延ばし、トイレットペーパーのようにに巻き上げて培養する方法。
もう少し具体的に説明すると、シート上の培地に腫瘍組織を植え付け、まずはタンパク質とコラーゲンでコーティングします。そのまま培養液にまる1日浸けこんだあとで軸に巻き取り、さらにそれを2~3日間成長させると、トイレットペーパー状の腫瘍細胞組織ができあがります。
この試料はひとつの塊として成長しており、表面(外周部)と内部(軸に近い部分)で異なる性質を備えます。
巻き上げていたシートを伸ばすと、塊だった組織を平面化できます。たとえば腫瘍のどの層でどれぐらいの酸素量の差があるか、また放射線や化学療法などの効果の表れ方の違いも確かめられます。このため患者個人に合わせて最も効果の高い薬品や治療方法が探しやすくなるというわけです。
研究者はこの2Dと3Dの状態を兼ね備えた試料により「基本的な細胞レベルの研究と腫瘍生物学、両方の研究を一度に進められる」としています。
(2015年11月25日 Engadget日本版「がん細胞をトイレットペーパー風に培養。トロント大学が2Dかつ3Dな培養技術を開発 (閲覧注意)」より転載)
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