引用元(勉強の為に引用しました。):
http://eetimes.jp/ee/articles/1503/18/news035.html
米国の大学が、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、半導体チップ上に人工の心臓を作ることに成功したという。他の人工臓器をチップ上に形成し、マイクロ流路で接続すれば、薬剤が各臓器に与える影響などを研究できる可能性がある。
[R Colin Johnson,EE Times]
米University of California at Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)の生体工学者グループは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って、“鼓動を打つ心臓”を半導体チップ上に作成することに成功した。
同研究グループは今後、チップ上で人間のあらゆる臓器を作成し、それぞれをマイクロ流体で接続することによって、ウエハー上で完全な人間のシステムを実現することを目指すという。
University of California at Berkeleyが公開した、チップ上に形成した心臓のデモ。“鼓動を打っている”様子がよく分かる 出典:University of California at Berkeley
まずは薬剤スクリーニングに応用
University of California at Berkeleyの教授であるKevin Healy氏は、EE Timesの取材に応じ、「(iPS細胞の開発で2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した)山中伸弥教授が発見した手法と同じく、皮膚の幹細胞からあらゆる種類のヒト組織を取り出すための方法を開発することに成功した。まずは薬剤スクリーニングに適用したいと考えている。そうなれば、(マウスなどの)動物を使わずに済むようになるかもしれないからだ。患者の幹細胞を使ってチップ上に臓器を形成できるということは、遺伝的疾患の治療にも役立つ可能性がある」と述べている。
また、マイクロ流路を使って各臓器を接続し、血液や生体液を運ぶことから、ウエハー上に人間のシステムを構築することによって、さまざまな臓器間における薬物の相互作用についても研究できるようになると考えられる。
Healy氏は、「例えば、心臓疾患を治療するための薬剤が、肝臓では毒素となる可能性もある。このようなことは、実際に患者に投与してしまう前に発見すべきだ」と述べる。
“生体ロボット”の実現も?
同氏は、こうしたシステムを利用すれば生体ロボットの作成が可能になるのではないかとの質問に対し、「その件については、プロジェクトの目標に入っていない。今回のプロジェクトは、米国立衛生研究所(National Institutes of Health)が各機関との協業により、薬剤スクリーニングを目的とした3次元ヒト組織チップの開発を目指すイニシアチブ『Tissue Chip for Drug Screening Initiative』の一環として、資金を提供しているためだ」と述べている。
ただ、チップ上でマイクロ流路を用いて各臓器を接続し、相互作用させているという点から、こうした技術が将来的に、ロボットなどの創造物を作成する上での基礎となる可能性もある。
Healy氏は、「それを実現するには、センサーやアクチュエータが必要だ。センサーについては容易に対応できるだろう。アクチュエータに関しては、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が現在、アクチュエータとしての機能を備える人工筋肉の開発に取り組んでいるところだ」と述べる。
同氏と研究チームはこれまでのところ、本物の心筋細胞を含む長さ約1インチ(2.5cm)の“人工心臓用ケース”をウエハー上に作成している。このケースに心臓の細胞を入れてから約24時間で、1分間に55~80回の速さで自発的に鼓動を打ち始め、マイクロ流路で血液を送れるようになった。また、鼓動の回数を増減することが実証されている薬剤に対しても、正常に反応するという。
Healy氏の研究グループの博士課程修了研究者であり、カリフォルニア再生医療機構(CIRM)のフェローでもあるAnurag Mathur氏は、「マイクロ流路は今のところ、栄養素を運んでいるだけだが、いずれは老廃物も運べるようになるかもしれない」と述べる。心臓の細胞は現在まで、数週間生き続けているという。
さまざまな種類の“チップ上の臓器”をマイクロ流路で相互接続し、血液と生体液を流すことも、将来的には可能になるかもしれない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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