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Suicaの代わりに「手」をかざす時代がやってくる? 日立のウォークスルー型指静脈認証を見てきた (2/3)
日立が東京・大森にあるオフィスに、指静脈による認証で入退館を管理するゲートを設置。歩きながら指をかざすだけで正確な本人確認をする実証実験を行っている。鉄道の改札機と同等の応答速度を目指すとのことだが、本当に可能なのだろうか?
ウォークスルー型指静脈認証の問題点
日立が指静脈認証技術の開発を始めたのは1997年で、技術自体には20年の歴史がある。これまでドアや銀行のATM、PCなどに内蔵する製品を展開してきたが、その応用領域を通用ゲートなどのフィジカルセキュリティ方面に拡大し、ウォークスルー型指静脈認証を発表した。
発表したコンセプトモデルでは、かざした指の位置と向きに合わせ、指先を狙って近赤外線を照射し、血中のヘモグロビンが近赤外線を吸収する特性を利用して、指の静脈パターンを撮影していた。複数の指静脈パターンを照合に用いることで、高い精度も担保できたという。
しかし、このシステムには大きな課題が2つあった。まずは認証精度の問題だ。高い認証精度を誇るものの、それは各指をある程度開いた状態での話。指を閉じてしまうと、指の境目が認識できず、静脈パターンを検知するのが困難だった。さらに手をセンサーに接触させずに認識する場合、周りから光が入りこんでしまい、環境によっては静脈パターンが分かりにくかった。
もう1つは照合処理の速度だ。コンセプトモデルでは、1分あたり70人をさばける速度だったが、これは認証用に登録しているデータが「100人弱くらいだった」(日立)ため。登録する人数が増えれば、それだけ照合にかかる時間も増えてしまう。ビルや空港内といった大規模利用を考えると、登録人数の増加に耐え得るシステムが必要だった。
新生「ウォークスルー型指静脈認証」は何が違う?
まず、“指閉じ問題”については、可視光と赤外線の両方で手の形を検知することで、指1本1本の形状把握に成功。非接触時の検知については、静脈パターンのコントラストを優先する形で近赤外線の強弱を調整することで、画像の精度が高まった。
照合処理については、画質が粗い縮小画像で照合を行い、候補を10分の1程度に絞り込んだあとに、再び通常の画質で照合を行う「二段階照合」方式を採用したほか、複数本の指をまとめて照合する際のパターンを最適化することで、理論値ベースで当初の約41倍という高速化を実現した。
「1000人分のデータが登録された状態でも、2014年のモデルと変わらぬ応答速度を保っています。今後、CPUやカメラの性能が上がったり、AIやディープラーニングを活用したりすることで、さらなる高速化も見込めます」(日立製作所 システムイノベーションセンタ 主管研究員 長坂晃朗氏)
このほか、非接触操作に適したデザイン変更や、システム全体の小型化といった改善も加え、これらの課題を解決するのに2年弱を要したという。
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