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Suicaの代わりに「手」をかざす時代がやってくる? 日立のウォークスルー型指静脈認証を見てきた (3/3)
日立が東京・大森にあるオフィスに、指静脈による認証で入退館を管理するゲートを設置。歩きながら指をかざすだけで正確な本人確認をする実証実験を行っている。鉄道の改札機と同等の応答速度を目指すとのことだが、本当に可能なのだろうか?
「指静脈認証」の強みと弱点
静脈認証は赤外線を利用するため、顔や虹彩といった他の生体認証に比べて、環境光による影響を受けにくい。そのため、屋内だけでなく、屋外での利用にも向くメリットがある。日立製作所 セキュリティイノベーション推進センタ センタ長の澤田昭人氏によると、指静脈認証はプライバシーと使いやすさにも強みがあるという。
「顔などをカメラで撮影されるよりも、指を撮影される方が、プライバシーの側面で利用者の抵抗は少ないと感じています。そして今回のような実装なら、Suicaなどの非接触型ICカードをかざす感覚で使えるため、普及への心理的ハードルも少ないでしょう」(澤田氏)
一方で普及のネックになるポイントもある。あらかじめ静脈パターンのデータを登録しなければならない点だ。認証時に近赤外線を使うため、登録にも専用の装置を使う必要があり、登録のためのハードルが高い。空港やスタジアムなど、1万人や10万人規模で使うケースでは、これが大きな問題となり得る。
「登録自体は20秒程度で終わるのですが、専用機器が必要なところなど、運用面での課題は残ります。日立では、スマートフォンで指静脈を認証する技術も開発しており、将来的にはこうした技術と連携したり、他企業や行政と協力したりすることで解決できればと思っています」(長坂氏)
Suicaの代わりに「手」をかざす日がやってくる?
この実証実験は2017年12月末まで行う予定で、今後は実運用における課題抽出や技術改善を経て、製品化や10万人規模の利用を目指して研究を続けていくという。製品化の際は「海外での展開も想定しており、ハードウェアを売るよりもサービスとして販売するイメージ」(澤田氏)とのことだ。
2020年に東京オリンピックが控えていることもあり、サイバーセキュリティに加えて、現実世界におけるセキュリティへの注目や需要は高まりつつある。静脈認証についても、決済システムとの連携を模索する実証実験が行われるなど、さまざまなビジネスへ応用できる可能性が広がってきている。
海外では、カメラやセンサーを活用してレジなしスーパーを実現している「Amazon Go」といった新形態の店舗が出てきているが、Suicaの代わりに「手」をかざして、改札やレジを止まらずに抜けていく――日本でもそういうことができるようになる日は、そう遠くないのかもしれない。
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