2017年4月7日金曜日

復興相:発言なぜ軽い 怒る避難者 実績作りの調整ポスト

復興相:発言なぜ軽い 怒る避難者 実績作りの調整ポスト

毎日新聞
今村雅弘復興相
 大臣が、なんでこんなに軽いのか--。原発事故の自主避難者について記者会見で「自己責任」と言い放った今村雅弘復興相が国会で改めて陳謝した。しかし、復興行政トップで資質を問われたのは彼だけではない。原発事故や震災復興に向き合う政府の姿勢に不信が広がっている。【安高晋、堀祐馬、岸達也】
 復興相の発言は、自主避難者へのいじめや差別を増幅させるおそれがある。
 福島県から新潟市に自主避難する30代女性によると、発言以降、避難者交流施設に「福島へ帰れ」という嫌がらせの電話がかかってきた。福島では自主避難から戻った知人の孫が「避難していたことでいじめられるから学校に行きたくない」と言っているという。女性は「経済的理由で仕方なく帰る人もいる。帰れば全てめでたしではない。発言を撤回してほしい」と話す。
 東日本大震災の被災者を支援する東京災害支援ネット事務局長の山川幸生弁護士は「被災者の立場に立って働くべき人間が、被災者を突き放した。政府は原発を安全だと言ってきた。その責任を回避する言い逃れで自己責任論に話をすり替えている」と憤った。
 今村氏の資質を疑問視する声も上がる。
 大阪市に子供2人と避難する森松明希子さん(43)は、今村氏の陳謝について「言葉の使い方ではなく考え方自体が間違っている」と怒る。島根県に避難した女性(51)は「復興にはいつも適当な対応をする人があてがわれる」。東京都に家族6人で避難する岡田めぐみさん(34)も「人選で間違いを続ける政府は、復興をきちんと考えているのか」と首をかしげた。
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 今村氏は佐賀県鹿島市出身の70歳。東京大法学部から国鉄入りし、JR九州の部長を経て1996年衆院選の佐賀2区で初当選した。7期目の昨年8月に初入閣した。
 4日の会見で今村氏が身につけていたネクタイも話題を集めている。人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターが描かれている。関係者によると今年1月に訪れた福島県三春町のアニメの博物館で贈られ、復興の話題作りになると好んで身につけているという。アニメ業界の関係者は今村氏について「残念のひと言に尽きる」と話した。
 復興相のポストは民主党政権時代の11年6月に新設された「東日本大震災復興対策担当相」が出発点で、今村氏を含め6人が務めてきた。このうち5人が初入閣。また、半分の3人が舌禍やスキャンダルに揺れた。最初に務めた民主の松本龍氏(防災相などと兼務、12年衆院選で落選)は放言で批判を浴び、在任9日で辞任。今村氏の前任の自民衆院議員、高木毅氏は大臣の資質を問われ続けた。復興行政トップの「軽さ」について、ある政府関係者は「当選回数を重ねても入閣できない議員らに入閣実績を作るための調整ポストだ」と解説する。
 そもそも復興庁自体が「省庁の寄り合い所帯」と言われる。震災復興を目指して省庁にまたがる問題の整理、調整が主な役割で、職員約530人の大部分は他省庁や自治体、企業からの出向者だ。

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